コンクールなどへの出場について
ー おと塾の考え方 ー
●音楽のすばらしさ
素晴らしい演奏に心が感動に満たされたコンサート。そんなときに,私たちはどんな表情で会場をあとにするでしょうか。
ステージでの演奏を全て終えて,ロビーでお帰りになるお客様のお見送りをすると,自分たちの演奏をどのように受け取って
いただけたのかが,お客様の表情や言葉からうかがい知ることができます。
小中学生が合唱や吹奏楽のコンクールに出場して審査結果を待っているときの表情は,不安と希望を行ったり来たりという
雰囲気でしょうか。結果が発表されると歓声と悲鳴が交錯し,数ヶ月にわたる努力への「審判」が下されるかのようです。
でもそれは,私たちがコンサートのあとにお客様からいただく喜びとは少し違うように感じます。私も昔,合唱や吹奏楽の
コンクールに団員や指揮者として出場したことがあり,喜びも挫折も経験しました。我が子もまた,部員や小さなピアニスト
として出場しています。
音楽コンクールはプロの演奏家・作曲家を目指している若い音楽家が,一流のプロへと歩みを進めていくための登竜門として
始められました。コンクールでの上位入賞によって広く力量を認められることは,演奏家人生に大きな影響を与えます。
そんな中で,世界的に有名なコンクールで優勝した演奏家よりも,同じ年の2位や3位になった演奏家が有名になっていく
という事実も見逃せません。それは,音楽メディアやコンサートでの演奏が,聞き手にどのように受け取られたのかという
ことを示しているように思います。
演奏者・創作者がいて,聞いて下さる聴衆との音楽のキャッチボールが行われることで,音楽の素晴らしさは磨かれて
いくのでしょう。
●育てたい力
私は,レッスン生が目の前で努力しているときに,私がこれまで学び経験して得てきた知識や技術のすべてをお伝えして,
少しでも音楽の喜びや素晴らしさに近づいていただきたいと願っています。レッスン生が嬉しそうに笑顔になってくださった
時が,私の一番嬉しいときです。
小さなお子さんがピアノの前へ歩いて行って,ようやく手の届いた鍵盤を押して音が出たら,親でなくても温かい拍手を
送りたくなります。実は,演奏はそのようなところに生まれるのだと思います。年齢や経験が重なってきたら,音を出す
だけではなく,「どのように響かせるか」「どんな魅力を加えて届けるか」ということを考えて,音を選んだり磨いたり
しながら「私の演奏」を創り上げていくことが必要になってくるでしょう。私は,そこで生徒さんたちの歩みが強められる
ように導いていくことが,音楽教室の役割と心得ています。その上で,一人一人の演奏に,厳しい耳を持った一人の聴衆と
してアドバイスをしていきたいと思います。それはやがて,ステージでの演奏へと進んでいったときに,客席の聴衆からの
温かい拍手や笑顔となって帰ってくるに違いありませんし,それが音楽の素晴らしさであると気づくことになるでしょう。
ただ,音楽には「技術や知識の習得」という側面もありますから,より早く目標を持って進むためにコンクールへの出場を
活用することもひとつの方法だと思います。それは,プロにとってのコンクールとは違う,アマチュアとしての活用方法だと
考えます。ですから,おと塾として積極的に出場をお勧めすることはいたしませんが,出場のご希望がある場合にはもちろん
レッスンの中で指導させていただきます。